揉み揉み(前回からの続き)

粘らない井戸素地土に挑戦です。
20年も前から幾度か挑んできた記憶があります。
そして、いつもここで断念をしていました。
こことは下の写真です。


土揉み1



土の水分を均一にした後、
空気を抜くために菊練りという作業に入ります。
例えば信楽土のような小石混じりのザラザラした土は意外に揉めます。
空気が抜けるのもはやいし、少しぐらい空気が入っていても平気です。
ところが、この土ときたら菊練りをすると大きく割れていきます。
割れないようにおとなしく揉むと、一見きれいにまとまりますが、
ロクロに据えると、さあ大変、
芯に空洞がつながって、ロクロ引きは不可能です。
なので、これほど粘らない土は、ここで断念してきたのでした。

しかし今回は諦めるわけにはいきません。
そこで割れても割れても上下を替えて練ってみました。
すると、練りに反比例して割れが小さくなっていくのです。
そして、ついにまとまりました。

土揉み2


素地土中の空気がほとんど抜けたということでしょう。
「いつまで練るの?」の質問に「土が答えてくれる」と言った
昔の陶工の話は本当なのですね。

さてロクロ引きです。
以織のロクロ引きは器体が大きくても小さくても基本は同じ。
3回にて引き上げて、内側の指跡をヘラで消します。
そして高麗茶碗引きでは次の作業が大切です。
通常、仕上げ削りをする腰部にヘラをあて、
あまった土を伸ばしてしまいます。
この作業で器体の一部が膨れたり、歪んだりします。
が、これこそが高麗茶碗のロクロの特徴です。
次に続く仕上げ作業の手数を減らすための技なのです。

そして、この粘らない素地土も上記の作業に応じてくれたのです。

水引き


まだまだ不慣れな土ですが、大井戸茶碗も引けました。

続いて仕上げの高台削りです。
ほら、前回お話した椎茸高台が自然と生まれてくるでしょう。
これならよさそうなカイラギを望めそうです。

高台削り1
高台削り2



でもね、こうした難しい土でロクロを引く最も大切な理由は
他にある気がします。
それは「ままならない」ということ。
どうにか引き上げることが精一杯で、「ああしよう、こうしよう」なんて
余分な作為の入り込む隙間が無いということです。


スポンサーサイト

追いつめられて

乾燥中のカオリン


本当はわかっていたのです。
これしかないって。
もう残された選択の余地は無いのです。

でもね、さすがに自信が湧きませんでした。
以織の自負は、粘りの少ない土でもロクロが引ける技でしたし、
そう、うそぶいて通ってきました。
しかし、実は越せないラインがあったのです。

前々から試さねばならないとは思っていました。
井戸茶碗の素地土は、カオリン単味だろうと。
総合的に考えて答えは出ていたのです。

けれど、それでは製品ベースに乗せられない。
カオリン単味で大井戸茶碗を成形するには技不足だ。
まして煆焼したカオリンも混合せねばならないのです。
理由は生のカオリンだと乾燥切れを確実に起こすから。
粘性のほとんど無いところへもってきて、
殺粘材をもプラスせねばならないのです。

そこでいままで、粘性のあるカオリンを探して
成分だけは確保するよう素地土を調整していました。

井戸の最大の特徴であるカイラギは、
収縮率の大きな釉薬でないと生まれません。
必然としてカイラギになる縮まる釉薬が必要です。

でもそれだけでは足りません。
高台削りをした時、削り跡が縮緬状の椎茸高台にならないと、
良きカイラギを望めないのです。
そして椎茸高台が生まれるほどのカオリン素地土には、
粘性がほとんど無いのです。

なので、少しづつ少しづつ粘性を減らした素地土に替えてきました。
けれどロクロ師に必要不可欠な素地の粘性が、
表現の邪魔をしているとすれば、
残った選択は、飛び越えることだけです。

古作の井戸茶碗が焼かれたという窯跡は、
近年の発掘調査により頭洞里という名の村とされています。
韓国南部の港湾都市・鎮海市の背にあたる山間部だそうです。
発掘によると、最初は表層に近い鉄分の多い素地土を使っていて、
赤い発色の井戸を焼いていたと読みました。
時代が下がるごとに深いところを掘り進めて、
素地土の鉄分が減っていくため、
薄い色の製品に変わっていくそうです。

で、現代において手に入る韓国産カオリン原土は
鉄分が少ない白色土です。
以織窯では、その原土を天日干しして乾燥させ、砕いて使用しています。
(画像は乾燥中のカオリン原土)
粉体になったカオリンも販売されていますが、
それでは粒子が一律に細か過ぎ、面白味がありません。
なので乾燥原土を叩くことで粗い粒子を混入させるわけです。
そして一部は窯に入れて1000度くらいで焼きます。
そうすると生土のような乾燥収縮をしなくなります。
生のカオリンと煆焼カオリンを混合して、
ようやく素地土が出来上がりますが、これでは鉄分が足りません。
なので黄土を加えて調整することとします。

カオリン単味に素地土を替えることが、
以織が飛び越えるべきラインだとしても、
そこに黄土を外すことはできません。
正確には黄土が一割ほど入ったカオリン素地土ということになります。
そしてこの黄土にはかなりの粘性があるのです。

が、煆焼物を含むカオリンに一割ほどの黄土の粘性なんて、
生のカオリンだけの僅かな粘性よりも、程度の低いものでした。
心配無用だったのです。
本当の心配は「この土で大井戸茶碗がロクロ引き出来るのか」。

次回へ続く

夫婦そろって

夫婦仲良しの話ではありません。あぁ、仲はいいです。

女房が今日からネックレスト着用となりました。
一昨日からひどい首の痛みを訴えていたミッちゃんが、
こらえきれずに、娘婿の治療院へ。
娘婿はカイロプラクターにて、
駅ひとつ隔てた街で「秦野カイロ」という治療院を開いています。
そこは肉親のありがたさ。
日曜日なのにも関わらず治療をお願いした次第。

帰宅したミッちゃんの首にはネックレストがまかれていて、
過労による頸部肉離れ。
治るにはひと月ほど必要とか。

思えばここ数ヶ月、
休む暇無く朝から晩まで介護保険加入開始の歳なのに、
働き詰めの毎日にて、壊れるのがあたりまえ。
よくぞ、ここまで我慢したかと。

ごめんなさい。ありがとう。

かく言う小生も、ここのところはずしていても我慢出来たのに、
やはり過労か、首の病がうずき出し、
左腕力とみに減退して、仕事中はネックレスト着用にあいなりました。

夫婦そろって仲良く首に巻くさまは、首の回らぬ我が家計の象徴か。

なんとか健康を保っている姉さんよ、お願いだから元気でいてよ。

              今夜も神頼みの爺以織です。

               

絵師。少白ワールド第2弾

少白絵付け1

昨日は「絵師・少白」こと仲森智博氏が東京より来てくださいました。
そして生素地の器へ描いてくださったのが上の画像です。
素焼きをしない生素地への作業は神経を張りつめなければなりません。
気を抜いて器の端でも持とうものなら、
粘り気の無いもろい磁器素地はパッカと割れてしまいます。

少白氏は呉須絵を描くだけではありません。
生素地だからこその性格を生かして、彫り表現も加えます。

実は以織窯では甥の小宮正樹が運営する加羅古窯への技術支援をしています。
「古染付け」という400年前の中国製磁器の表情再現を試みています。
雅味たっぷりの古作に近づけたら、「食事がもっと楽しくなるはず」との
仲森氏提案に賛同して、以織窯陶工も磁器に挑戦を始めました。

と、固い語り口になってしまったけど、
いままで陶土しか扱わなかった陶工が、
磁器土に触れて困惑しているのがロクロ引きに表れてしまいます。
ご覧の通り、少白士の絵付けはもう完成しているというのに、

少白絵付け2

我ら以織窯陶工と加羅古窯陶工の3人のゴールは遠そうです。
ボソボソ粘りのない素地土を扱い慣れているにも関わらず、
磁器土の熱変形が頭から離れず、ロクロ引きに躊躇してしまうのです。
焼くと高温による素地土の軟化で、形が大きく歪むからです。

素地土も釉薬も常に自家製の以織窯。
磁器土もそれなりに出来るのだけれど、熱変形に悩んでいます。
なので必要以上に厚い厚い器体を作ってしまい、
一回目の試焼は
少白氏のせっかくの絵付けを無駄にしてしまう結果だったのです。

敗者復活を願う第2回目ですが、まだまだ研究が足りません。
なのに、少白氏の絵付けはこんなに可愛いのです。

少白絵付け3

ね、ね、可愛い盃でしょ。
なんとか熱変形しないで焼き上がってくれないかな。
研究が足りない以織は、つい神頼みをしてしまいました。

プロフィール

iorijiji

Author:iorijiji
井戸茶碗陶術遣い

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR