山は今



大雪の予報が外れて山里はほっとして目覚めた。
女房の珍しいリクエストに応えて、
甘い物を買いに走った帰り道、
山は神々しく輝いて天に向かって息を吐いていた。

しかし標高300メートルの拙宅に戻ると、
あの圧倒は望めない。
それでもシャッターを押してみたのがこの画像。

今朝、犬の雄叫びに混じって悲愴な悲鳴が聞こえて来た。
外へ出ると拙宅の前の網に4歳くらいの牝鹿が絡まって、
二匹の大きめの猟犬に尻やら腿やら噛まれ、
身動きできぬまま引きずられていた。
犬を制していると猟師の車が止まった。
「この前、絡まった時、おじさん見たよ」「・・・」
「もうこの場所で三頭目だよ」「・・・」
「逃がす時もあったっていいんだよ」「・・・」
隙を見逃さず噛み付きに行こうとはやる二匹を
順番に車に乗せていく猟師。
嫌がらせにお経でも唱えてやろうとして鹿の瞳を見たら、
どういうわけか絶望を映していなかった。
犬をケージに入れ終わった猟師は、
「はずれるかな」とはじめて口を開き、
鹿を網から解放した。
尻をブドウ色がかった血に染めて、だが気丈に走り去る。
思わずおじさんの肩をたたいて
「ありがとう」と涙流してしまった。

その後、2台の仲間の車がやって来て、上へ登って行ったが
今日は犬の鳴き声も銃声も聞こえないままだった。

拙宅の周りでは毎年、害獣避けと称するネットに
子鹿から親鹿までが絡まって、
なんとか抜け出そうともがいたあげく窒息死する。
意見はそれぞれあるだろう。
害獣避けネットなら、でももっと編み目を小さくして
鹿の頭が入らなくすればいい。
実際はちょうど抜けない大きさになっている。
樹脂製に見える網糸には、しかし鉄線が仕込まれていて、
絡まった鹿が死にいたる工夫がされている。

我が腕の中で息絶えた幼い牡鹿を思い出して記した次第。



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井戸茶碗陶術遣い

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