追いつめられて

乾燥中のカオリン


本当はわかっていたのです。
これしかないって。
もう残された選択の余地は無いのです。

でもね、さすがに自信が湧きませんでした。
以織の自負は、粘りの少ない土でもロクロが引ける技でしたし、
そう、うそぶいて通ってきました。
しかし、実は越せないラインがあったのです。

前々から試さねばならないとは思っていました。
井戸茶碗の素地土は、カオリン単味だろうと。
総合的に考えて答えは出ていたのです。

けれど、それでは製品ベースに乗せられない。
カオリン単味で大井戸茶碗を成形するには技不足だ。
まして煆焼したカオリンも混合せねばならないのです。
理由は生のカオリンだと乾燥切れを確実に起こすから。
粘性のほとんど無いところへもってきて、
殺粘材をもプラスせねばならないのです。

そこでいままで、粘性のあるカオリンを探して
成分だけは確保するよう素地土を調整していました。

井戸の最大の特徴であるカイラギは、
収縮率の大きな釉薬でないと生まれません。
必然としてカイラギになる縮まる釉薬が必要です。

でもそれだけでは足りません。
高台削りをした時、削り跡が縮緬状の椎茸高台にならないと、
良きカイラギを望めないのです。
そして椎茸高台が生まれるほどのカオリン素地土には、
粘性がほとんど無いのです。

なので、少しづつ少しづつ粘性を減らした素地土に替えてきました。
けれどロクロ師に必要不可欠な素地の粘性が、
表現の邪魔をしているとすれば、
残った選択は、飛び越えることだけです。

古作の井戸茶碗が焼かれたという窯跡は、
近年の発掘調査により頭洞里という名の村とされています。
韓国南部の港湾都市・鎮海市の背にあたる山間部だそうです。
発掘によると、最初は表層に近い鉄分の多い素地土を使っていて、
赤い発色の井戸を焼いていたと読みました。
時代が下がるごとに深いところを掘り進めて、
素地土の鉄分が減っていくため、
薄い色の製品に変わっていくそうです。

で、現代において手に入る韓国産カオリン原土は
鉄分が少ない白色土です。
以織窯では、その原土を天日干しして乾燥させ、砕いて使用しています。
(画像は乾燥中のカオリン原土)
粉体になったカオリンも販売されていますが、
それでは粒子が一律に細か過ぎ、面白味がありません。
なので乾燥原土を叩くことで粗い粒子を混入させるわけです。
そして一部は窯に入れて1000度くらいで焼きます。
そうすると生土のような乾燥収縮をしなくなります。
生のカオリンと煆焼カオリンを混合して、
ようやく素地土が出来上がりますが、これでは鉄分が足りません。
なので黄土を加えて調整することとします。

カオリン単味に素地土を替えることが、
以織が飛び越えるべきラインだとしても、
そこに黄土を外すことはできません。
正確には黄土が一割ほど入ったカオリン素地土ということになります。
そしてこの黄土にはかなりの粘性があるのです。

が、煆焼物を含むカオリンに一割ほどの黄土の粘性なんて、
生のカオリンだけの僅かな粘性よりも、程度の低いものでした。
心配無用だったのです。
本当の心配は「この土で大井戸茶碗がロクロ引き出来るのか」。

次回へ続く
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こんにちは、

赤カオリンが多いと挽けません。
ましてや、3回では切れてしまいます。
焼き上がりアップがたのしみです。
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Author:iorijiji
井戸茶碗陶術遣い

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